院長のワンポイントアドバイス

乾癬ワンポイントアドバイス⑨

外用剤の最近の話題としては、ビタミンD3外用剤とステロイド外用剤が既に混合された状態で製剤化されたものがようやく日本でも使用可能になりそうです。このような混合製剤は、海外では10年以上前から承認されて使用実績もあったのですが、日本ではなかなか承認されず、皮膚科医の間では今か今かと期待されていたものです。

前号では、「私の意見として、ビタミンD3外用剤は濃度の低下が乾癬に対する効果に致命的な影響をもたらすと考えている為、1.混合して使用する、 2.重ね塗りをする、というような塗り方はなるべく避けており、3.それぞれ単独で用い使用回数で調節する、というように時間をずらした単独使用でコントロールしています。」などと述べましたが、今回の混合外用剤は、既に私たちが用いているビタミンD3外用剤と同程度の濃度を有しており、それにvery strongクラスのステロイドを含んでいます。なので、これまでのように混合することによる濃度低下の心配はありません。しかも1日1回の使用となるようで、ビタミンD3外用剤とステロイド外用剤をそれぞれ1日1回朝夕に単独で外用することと比べ、かなり手間が省けて患者さんの負担も減りそうです。

しかし良いことばかりではありません。皮膚科専門医にとっては乾癬に対する新しい武器が手に入り、これまでの乾癬治療と組み合わせてさらに効果的な病状のコントロールが実現できそうですが、専門知識が無い他科の医者にとっても一度は使ってみたい薬剤となりうるのです。診断の不確定なままに濫用したり、乾癬に対しても、適切な外用指導をせずに漫然と長期にわたる使用で、ステロイドによる副作用が出てくる可能性もあります。ただし、これまでにも新しい薬剤が出てきたときには、試行錯誤しながらも知恵を出し合いながら解決してきたわけですから、私は楽観しています。
今回の薬剤は今秋に処方が可能となりそうですが、その後も同様の混合製剤が出てくることと思います。楽しみにしておいて下さい。